いま日本の農林漁業は曲がり角を迎えています。
地方に住む住民の高齢化による限界集落の維持問題、第一次産業の後継者問題、雇用の急激な減少、少子化問題...。こうした様々な要因が相互に絡み合い、社会そのものの綻びが地方村落から大きくなりつつあると言われています。
人間はその時代時代において、住む場所も、生活のスタイルも、食の確保方法も、大きく変化をし続けてきました。そのことによって地球上の覇者としての地位を確保したとも言えるかもしれません。
昨今顕著になった個人の所得をはじめとする経済格差は、住民の生活を直撃しており、都市生活者との文化的生活水準には大きな格差となって現れ、日本社会全体のゆがみとなっています。
国民の多くが都市部に住む日本人にとって、農林漁業を共通問題とする問題意識がほとんどないのが現実です。
山村の現実を我が問題として解決方法を模索し、苦悩しているのは、結局は山村地域に住む人たちだけと言っても過言ではないと思います。
「それでいいじゃないか」という声も、聞きます。
長年、山村再生に取り組んできた諸団体のメンバーですら、山村地域の人たちとの協働を訴えてはいますが、大きく変革しようとはしないのが現在の山村再生事業の実態でもあります。
日本の将来は、極めて、危険な状況に追い込まれています。
加えて、実効性のある山林再生のプロ専門家は、数えるほどしか存在しません。日本の山林のほとんどは、これまでも、そしてこれからも、放置されたままになっていくのです。
心ある人達と共にこうした危機感を訴えてから約10年の年月が経過しました。
近年「里山」再生が重要な課題としてクローズアップされています。
折しも経済再生を訴える現政権が国際競争力をつけることによって農業を再生すると訴えています。
今の日本の農業政策は、集落営農(農業経営の大規模化)と6次産業化の2本柱によって国際競争力をつけるという方向に突き進もうとしているように思います。
しかしその方向性は、誤っていないでしょうか?
敢えて問いたい。
農業に国際競争力の概念は必要なのだろうか。
そもそも農業とは、地球規模で差別化を競う産業なのだろうか、と。
それぞれの地域には、その地域特有の強さがあります。
他の地域での事例や理論を参考にしつつも、地域の差異を活かす生活を構築できます。
そのために重要な視点は、従来にない発想、異種の経験を、先入観を排除して活かす取り組みが重要になります。そして、その地域が持っている潜在力、「地域力」とも呼べるものを生活にダイレクトに有効活用することが、いま求められています。
そこに、これからの地域再生のポイントがあります。
私達は、そのように思うのです。
現実の話として、都市部と比べると、山村地域の物価は安い。
特に、家賃等をはじめとする住生活関連、そして農漁業産物を中心とした食生活に関わるコストは、農漁山村地域に圧倒的な優位性がある。平たく言えば断然「住みやすい」という側面もあります。
雇用確保や収益を確保できる事業展開ができれば、比較すれば少ない収入であっても経済的にも充分に豊かな生活を送ることができる。
現実には環境整備も必要です。それは収益事業及び雇用の確保(生活費の確保)、住居の確保、教育・文化的生活の確保を意味します。
そして、その根本要因はただ一つ「人」であると考えています。
私たちが取り組める現状を打開するひとつのポイントは雇用であり、収益を確保できる事業遂行にあります。しかし、それだけにとどまるものではありません。
それぞれが、自分の持つ得意分野から、人脈から、行動を開始しよう。
私たちは、そんな一人ひとりが積極的に生きる社会の構築を目指したいと思っています。
今いる場所から、いまできることを始める。
それが里山ルネサンス総合研究所の進むべき道と考えています。
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